工場のIoT化、無線で4割安く VBが機器開発

2016/11/14 6:30 日本経済新聞 電子版

あらゆるモノがネットにつながる「IoT」技術による製造革新が話題を集めている。工作機械などの稼働状況を遠隔で管理し、データを吸い上げるシステムなどへの関心が高い。 新築の工場ではシステムを導入しやすいが、既存工場に導入するには工夫が要る。課題の1つがネットワークの確保にある。無線機器開発のKpネットワークス(東京・港、山本直延社長)はこうした課題を踏まえ、工場などのIoTに対応した無線LANのアクセスポイントをこのほど開発。11月下旬に販売を始める。

■有線不要、無線でデータを収集

 名称は「KPWL―0300」。工場内などに取り付けた温度や湿度などのセンサー、監視カメラなど200台と無線で接続してデータを収集するのに使う機器だ。

 無線で接続できるので、工場内で新たな有線の通信ケ ーブルを敷かずにすむのが利点だ。工場の生産ラインは工作機械や作業台などが配置され、ケーブルを敷設するには手間がかかる。また、ケーブルを敷くと、工場内のレイアウトを変更する際に敷き直しなどの手間やコストが生じうる。

  工場設備に温度や音、振動など異なる種類のセンサーを取り付けることを想定し、設備からのデータを整理するためのゲートウェイを設けて、アクセスポイントに通信する仕組み。山本社長は「すでに複数の上場企業から、工場での導入のためにそれぞれ数十台程度の受注が入っている」と明かす。

■九大発VBの技術を活用

 新製品の通信方式は九州大学発ベンチャー、ピコセラ(福岡県糸島市)の無線通信技術を活用した。アクセスポイント間を接続して通信できる「無線バックホール方式」を採用して いる。ケーブルの設置が必要で複数のフロアにまたがる設置が難しい「有線バックホール方式」と比べて、導入にかかる費用は6割程度に抑えられるという。

 新製品では最新のチップセットを使い、通信ソフトの計算手法を工夫している。「国内の無線バックホール方式では通信速度(理論最大値)が最速」(山本社長)という。

 アクセスポイントの価格は1台30万円。工作機械などにセンサーを取り付けて生産性を高めたい工場や、製品の搬送や管理などに活用した物流施設などの用途を見込んでおり、来年4月までに1千台の販売を目指す。

 同社はアクセスポイントに加え、収集したデータを管理するソフトも年内に投入する予定だ。データをパソコンなどで一括して管理できるサービスを計画している。将来はパソコン側から機器を操作できるようにして、導入企業の生産性改善を後押しする。

■中小企業がターゲット

 シャープも複数のアクセスポイントを無線でつなぐ方式の製品を出しているが、屋外のイベントや観光地などの利用を想定しており、生産現場のIoTを意識した製品は珍しい。山本社長は「大規模な投資が難しい中小企業などがターゲット」と語る。企業や工場の規模を問わず、あらゆる製造業にとってIT(情報技術)戦略の重要性がさらに増す。同社のアクセスポイントのようなIoT化を支援する機器は増えるとみられる。

(企業報道部 世瀬周一郎)

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